ペインクリニックとはどのような診療科ですか?
ペインクリニックとは痛みの治療を専門とする診療科です。どのような原因であれ痛みが長く続くと、日常生活に悪影響を及ぼします。この痛みを軽減することで、より良い日常生活を取り戻すことを目標に治療をしていきます。
ペインクリニックで治療するのはどのような病気ですか?
基本的に痛みを有する病気は何でも診ますが、主な病気は以下の通りです。
・三叉神経痛(顔面の激しい痛み)
・帯状疱疹後神経痛(帯状疱疹の後の痛み)
・腰下肢痛(痛み止めでは治らない腰や脚の痛み)
・頚肩腕症候群(長引く首・肩・腕の痛み)
・頭痛(片頭痛などの頭痛)
・幻肢痛(失った腕や脚の断端や先端の痛み)
・顔面神経麻痺、突発性難聴(痛みではありませんが、治療の手助けをします)
・その他
ペインクリニックではどのような治療をしますか?
当院で行える主な治療法を以下に挙げます。
・薬物療法:痛みの種類に応じて適切なお薬を見つけて治療します。
・神経ブロック療法:痛みの原因となっている神経の働きを抑えて痛みを
軽減します。
また血流を改善する事で治る痛みや病気もあります。
・光線療法:針を刺すことのない治療法です。表面だけでなく少し深いところまで
治療効果が到達するような光線療法の機械を当院では採用しています。
神経ブロックとはどのような治療ですか?
痛みの原因となっている神経の近くに局所麻酔薬などの薬を注射することにより、神経の働きを抑えて痛みを軽減させる治療法です。痛む場所によって様々な種類の神経ブロックがあります。当院では安全かつ確実に効果を得られるよう、多くの神経ブロックを超音波やX線透視を使って行っています。
神経ブロックは痛いですか?
針を使って注射する治療法ですので痛みが全くないことはありません。しかしながら当院では神経そのものに針を刺す神経ブロックは少なく、神経のすぐそばで薬を注射しますのでひどく痛むことはほとんどありません。また神経ブロックを行う針を刺すために、皮膚と皮膚の下にも局所麻酔を注射しますので針を進めるときの痛みも少ないです。
ペインクリニックでの治療では必ず神経ブロックをするのですか?
ペインクリニックの治療において神経ブロックは特徴的な治療法の一つですが、神経ブロックが有効な痛みと、有効でない痛みがあります。神経ブロックが有効だと思われる痛みの場合には神経ブロックをお勧めしていますが、どのような治療を受けるかを決めるのは患者さん自身ですので、注射することを望まない方には薬物療法や光線療法など別の治療法をご提案し、納得いただいた治療を行っています。
リハビリテーション科があるようですが、どのようなリハビリテーションをしていますか?
当院のリハビリテーション科では、運動器のリハビリテーションを中心に理学療法士によるマンツーマンでのリハビリテーションを行っております。「運動器」とは、骨・関節・筋肉・神経などの身体を支えたり動かしたりする組織・器官の総称です。「運動器」に関する疾患としては、腰痛や頚部痛、肩痛、変形性関節症、スポーツ障害などがあります。
問診を行いながら、それぞれの患者さんの痛みの症状に合わせた体操・ストレッチの指導、姿勢調整、生活環境整備の指導、日常活動量の調整・全身運動指導を行っております。
また痛みの感じ方は時間帯や状況、気象などによって変化することがあります。痛みは主観的なものであるため、身近な人にすら理解されないこともあります。そういった個別の痛みに対し、患者さんの訴えを尊重しながら問診を行い、それをもとに評価をしていき、それぞれの患者さんに合ったリハビリテーションを提示し、最終的に患者さんが希望される治療を選択しております。
また薬物療法や神経ブロック療法と運動器リハビリテーションを併用することで、より楽な日常生活を取り戻せるようにサポートいたします。
ペインクリニックで治療をすれば必ず痛みがなくなりますか?
一口に痛みといっても、いろいろな種類の痛みがあります。すっきり治る痛みも多くありますが、すっきり治らない痛みが少なからずあるのも事実です。
慢性に経過し、すっきり治らない痛みの治療において体を動かすことは非常に有用です。しかしながら痛みが強いと運動やリハビリをするのが難しいだけでなく、日常生活に必要な動作すら難しくなります。このような痛みに関しては、痛みをある程度軽減させることで、リハビリをしやすくしたり、日常生活に困らないようにすることが治療目標になります。
このように難しい痛みの場合には、患者さん各々の痛みの種類や生活スタイルなどを考慮し、画一的な治療法ではなく、患者さん各々に最適と思われる治療法を探していきます。
痛みの悪循環とはどういうことですか?
痛みの悪循環を説明する方法はいくつかありますが、ここでは「痛みの恐怖−回避モデル」を使って説明します。例えば手や足を撲ったりして痛むことがあると思いますが、このような痛みは通常1-2週間もすれば良くなってくることを経験から知っており、痛みがあっても心配される方は少ないと思います。このような場合には痛みが軽減してきた段階で徐々に自分で痛む場所を動かすようになり、自然と回復していきます。しかしながらその痛みが1-2週間を超えて1ヶ月経ってもまだずっと痛んでいたらどうでしょうか?
いつまでたっても痛みが治らない場合には、「何か重大な病気なのではないか?」、「この先どんどん痛くなったらどうしよう?」と言ったこと考えるようになり、痛みの事ばかり考えるようになります。このようなネガティブな考えは不眠を起こしたり、痛みに対する恐怖や不安を抱いたりするようになってきます。痛みに対して恐怖を感じるようになってくると、痛みが出そうな行動を避けるようになってきます。このような行動制限は日常生活に支障をきたすようになり、日常の当たり前な事ができないことでうつ状態になっていきます。うつ状態では痛みはより強く感じられるようになり、さらなる不眠、恐怖、不安が生じ、行動制限もさらに進み、うつ状態も強くなるという悪循環に陥ります。
この悪循環を絶つことが痛み治療の1つの目標でもあります。痛みを軽減させることで、「治療をすれば痛みが軽減される」という安心感が生まれ、恐怖や不安を感じにくくなり、そのことで行動制限も少なくなり、体を動かすことができるようになります。体を動かすことで失った機能を取り戻すことができるようになり、機能が取り戻されればうつ状態からも脱することができ、痛みをさらに軽減させることにつながります。
「痛みの治療は根本治療でないから意味がないのでは?」と言われる方もおられますが、この悪循環を絶つ事で本来人間が持っている回復力を取り戻すということにおいて、痛みの治療は非常に大切だと考えられています。